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ゆうじろう爺

我が実親も大概な高齢で
特に父は引きこもりが続いていて
いよいよ足腰がヨボヨボになりつつある


毎月の病院と散髪の時だけは外に出るのだが
いい加減
杖なり歩行器なり使ってほしいのに
頑なに使わない


転ばぬ先のなんちゃらで
転んでからでは遅いんだが


どうも
二足歩行を手放すのはプライドが許さないようだ





患者にも
椅子に座ってズボンをはき替えたらいいのに
これまた頑なに座らない爺さんがいる


雄二郎さん 80歳



何度言っても座らねー



「僕はねー ジジイ扱いされるのが嫌なんだよ」

さすが!!
字は違えど ”ゆうじろう” だ
低音ボイスで攻めてくる
声だけで言ったら
”ゆうじろう” より ”けんじろう” がピッタリくる・・・
は、どうでもよくて


イヤイヤイヤ
あんさん
さっきヨロけましたやん
じゅうぶん過ぎるくらいの
誰が見てもジジイですがな
と、口に出したい気持ちを必死で抑える


転倒でもされようものなら
そりゃ何かと当方面倒で大変


おまけに骨折なんてなったら
このやり取りを見ていない御家族様は
全責任を医療側に押し付けて
ここぞとばかりに責め立てるのが常



だから
いつでも手を出せる体勢で身構えて
なんなら自分が下敷きにでもなって
負傷する覚悟
(ちと大袈裟か・・・)



雄二郎さんは
それを横目に見て
「だぁ~いじょうぶだって!」
と、片足立ちでズボンをはき始める



こぉいつぅ
おちょくってやんな!!!



はぁ~
どうにもならないので
カルテに残します

”指示入らね~”



患者を見守る看護師のイラスト




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